【講演報告】第一環境管理株式会社様の社内研修にて講師として登壇しました
弁護士の柏田笙磨です。
先日、当事務所が顧問を務めさせていただいている第一環境管理株式会社様にて、建築物衛生法に基づく令和8年度清掃作業従事者研修の講師として登壇いたしました。

今回の研修のテーマは、「プロフェッショナルとしての安全衛生とコンプライアンス 〜顧問弁護士から学ぶ、自分と会社を守る『ルール』の力〜」です。
清掃作業の現場に向けた研修で「なぜ弁護士が?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。この清掃作業従事者研修は、建築物衛生法に基づき清掃業の登録を行う事業所に義務付けられている法定研修です。受講対象者は全従事者で、カリキュラムは「安全及び衛生」「清掃の目的」「実務」などから構成されています。
もちろん、私から清掃用機械器具等及び清掃作業に用いる資材の使用方法等の専門知識をお話しすることはできません。しかし、建築物衛生法が目的とする「安全及び衛生」については、清掃作業にまつわる全国の労働災害事例から逆算し、予防法務の観点からご説明することができます。また、各種行政法の解釈から建築物の環境衛生行政の意義を紐解き、さらには労使間紛争や取引先とのトラブルといった法的リスクから逆算して、「作業従事者の責任と任務(従事者の自覚/現場での規律/サービス精神/情報管理)」を専門的見地からお伝えすることができます。
顧問先である第一環境管理株式会社様も、弁護士の専門的な知見を通じた講話により、従業員の皆様がプロとしての誇りを持ち、企業の看板を背負って顧客サービスを向上させること、そして会社の経営方針を深く共有していただくことを期待され、顧問弁護士である私に毎年ご依頼いただいているのだと拝察しております。

法律やルールは自分を守る盾
さて、清掃活動の現場には、様々な法律や作業マニュアルが存在します。これらは決して、現場の皆さんを縛るための面倒なものではありません。万が一の労災事故や理不尽なクレーム、予期せぬトラブルから、従業員の皆様の生命身体と生活、そして会社の信用を守るための強力な盾になります。
本研修では、法的な観点からプロフェッショナルとしての責任と安全について、主に以下の4点をお話しさせていただきました。
1 労働災害の恐ろしさと「自己流」の法的リスク
清掃作業従事中に負傷した場合は、労災保険を受給することが考えられます。労災保険制度の概要を説明するとともに、清掃業における労災事故を調査したところ「濡れた床での転倒」「脚立等からの転落」「不自然な姿勢による腰痛」が多発していることをご紹介しました。過去の裁判例を検討した結果、原因は不注意やマニュアル違反の落ち度があるケースが多数見受けられました。「自分はベテランだから」「面倒だから」とマニュアルを無視した自己流の作業で怪我をした場合、法律上、労働者側の過失(過失相殺)が問われ、十分な補償が受けられなくなることがあります。会社には従業員を守る安全配慮義務がありますが、ルール違反は結果的に自分自身を追い詰め、会社も庇いきれなくなる事態を招きます。
また、指定された保護具の着用は義務であり、洗剤の誤用(混ぜるな危険)や換気不足は命に関わる重大な労災に直結することも過去の事例をもとにご説明しました。面倒に思われる日々の「ヒヤリ・ハット」の報告や、事前の危険予測(KYK)が、法的に問われる事前対策として最大の防御策となります。労災保険等の補償は必ずしも十分なものではなく、「怪我がなく、健康に過ごせること」が一番であることをご説明しました。
2 第三者への配慮と高額賠償リスク
例えば、モップ掛け直後の濡れた床で利用者が転倒・骨折した場合、数百万〜数千万円規模の高額な損害賠償に発展する裁判例が多数存在します。現場でよく見かける「清掃中・足元注意」の看板を設置することは、単なるマナーではありません。万が一裁判になった際に、「私たちは注意喚起の義務を法的に尽くしました」と主張するための、重要証拠(盾)になるというリアルな実態をお伝えしました。
3 エッセンシャルワークとしての誇りと建築物衛生法
清掃の目的は、単に「綺麗に見せる」ことだけではありません。不特定多数が利用するビルや施設において、感染症予防や害虫防除などを通じて公衆衛生を確保し、人々の命と健康を守ることこそが、建築物衛生法が定める最大の目的です。厳しい国の基準をクリアした登録業者として、皆さんの日々の丁寧で適法な作業が、エッセンシャルワークとして第一環境管理株式会社を、そして社会インフラを支えているのだというプロフェッショナルとしての誇りについて再確認いたしました。
4 現場の規律と情報管理の重要性
現場に出れば、従業員のお一人お一人が「第一環境管理の顔」です。業務中の過度な私語、顧客スタッフとの度を越えた慣れ合い、あるいは休憩室など施設の一部の私物化は、単なる態度の問題ではなく、法的には「職務専念義務違反」や「善管注意義務違反」にあたります。これらは会社間の清掃委託契約を解除される(=皆さんの働く場所がなくなる)致命的なクレームに直結します。
さらに、清掃現場は機密情報の宝庫です。「見ない・読まない・他言しない・持ち帰らない」の徹底をお願いしました。特に昨今恐ろしいのがSNSです。「〇〇の部屋を掃除した」「ゴミ箱にこんなものが」といった何気ない投稿が、億単位の損害賠償や従業員本人の懲戒解雇・刑事罰を招く恐怖について、近年の有名企業の不祥事事案を交え、コンプライアンスの最重要事項として強調いたしました。
当事務所には、県内でも希少性の高い公認不正検査士の資格を持つ弁護士(不正対策の専門家)や、ACFE JAPAN(一般社団法人日本公認不正検査士協会)会員の弁護士が在籍しており、こうした情報漏洩や企業内不正の予防についても専門的な知見からサポートを行っております。
おわりに(顧問弁護士からのメッセージ)
不特定多数が利用する施設で公衆衛生を確保する清掃業務は、人々の命と健康を守る尊いエッセンシャルワークです。皆様が今後も誇りを持ち、心身共に充実した仕事ができるよう、法律顧問として万全のサポートをしたいと、皆様の真剣な眼差しを拝見して改めて強く感じました。
ところで、講和の途中では、顧客目線での清掃作業員の心得(明るい挨拶、実直な仕事振りなどの職人型)をお話ししましたが、実は我々弁護士も、依頼者の利益を第一とする「職人」であるという考え方(プロフェッション)が、伝統的な価値観とされている職業です。
明るい挨拶での感じの良さ、丁寧かつ迅速な仕事、余計な事は話さない実直さ、そして、一つ一つの現場を終えたときに「良い仕事をしたな」と自分自身で誇れる仕事をすること。これが結局は顧客から信頼され、喜ばれる一番の方法であり、社業繁栄につながるのだという点は、弁護士も清掃のプロフェッショナルも全く同じではないかと、深く考えさせられました。
弁護士法人みなみ総合法律事務所は、地域を支える企業の皆様が、安全かつ適法に、そして誇りを持って業務に邁進できるよう、今後も第一環境管理株式会社様の顧問弁護士として全力で伴走してまいります。
企業内研修の講師依頼や、実践的なコンプライアンス体制の構築にご関心のある企業様は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
宮崎県内で活躍する弁護士法人へ
最後にご紹介です。有難いことに、ここ数年で企業様からの法律顧問契約のご依頼が急増しております。弊所は令和8年6月現在、宮崎県内で145社以上の企業・団体様と法律顧問契約を締結させていただいており、多種多様な業界の企業法務に関する専門知を蓄積しております。
当事務所の主な強みは人事労務ですが、その他にも以下の分野において確かな実績と強みを持っています。
- 人事労務・労使トラブル対応
- 債権回収
- 経営権紛争
- 会社法対応
- 各種業界の実務、レギュレーション対応
- 事業承継・相続
- 危機管理・不祥事対応・コンプライアンス体制構築
- 民事訴訟、刑事訴訟対応
企業内研修の講師依頼や、実践的なコンプライアンス体制の構築、日々の労務管理などにご関心のある企業様は、ぜひ当事務所までお気軽にご相談ください。
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担当:弁護士 柏田笙磨



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