他の相続人の相続放棄後にご依頼を受け、遺産取得額を2750万円増額した解決事例

1 ご相談のきっかけ・お悩み

ご相談者様は、亡きお父様の介護に積極的に関わってこられました。相続が発生し、他の相続人である甥御様と姪御様(姪B)は、「叔母さん(ご相談者様)に多く相続してほしい」という善意から、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを取りました。

しかし、良かれと思ってしたその手続きが、かえって事態を複雑にしてしまいます。法律上、彼らが相続放棄をした結果、生前お父様と全く面識のなかった、もう一人の相続人(姪A)の相続分が2分の1に増加。介護に尽力したご相談者様と、全く関与してこなかった姪Aの相続分が、全く同じになってしまったのです。

この予期せぬ事態に納得がいかず、ご自身の取得分を正当なものにしたいと悩まれたご相談者様は、顧問税理士からのご紹介で、当事務所にご相談に来られました。

2.本件の課題と弁護士の方針

本件の最大の課題は、一度有効に成立してしまった「相続放棄」を、いかにして覆すかという、極めて高度な法的判断が求められる点にありました。

幸い、相続放棄をされた甥御様と姪B様は、「ご相談者様の取得分を増やすため」という明確な意思をお持ちでした。この点に着目し、当事務所の弁護士は以下の戦略を立てました。

①相続放棄申述の取消し

「相続放棄をすれば、ご相談者様の取り分が増える」という錯誤を理由に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述を取り消す、という極めて稀な手続きに着手する。

②相続分の譲渡

相続放棄の取消しが認められた後、甥御様と姪B様の相続分(それぞれ6分の1)を、正式にご相談者様へ譲渡してもらう。

③遺産分割調停の申立て

上記手続きにより、ご相談者様の相続分を6分の5という圧倒的に有利な状態にした上で、姪Aを相手方として遺産分割調停を申し立て、最終的な解決を図る。

 

この戦略は、相手方(姪A)からの異議申立てのリスクを最小限に抑え、手続きのプロセスを家庭裁判所に明確に示すことで、迅速かつ確実な解決を目指すものでした。

3.当事務所の具体的なサポートと解決結果

ご依頼後、直ちに弁護士が代理人として、上記戦略を緻密に実行しました。

まずは相談者を通じて相続放棄申述取消申立書を甥、姪Bから家庭裁判所に出してもらうこと、これが受理されたら相手方、甥、姪Bを相手方として遺産分割調停を申し立てて、相手方が申述取り消しの意思表示を争わないかどうかを確認して、争わないようであれば家庭裁判所にも見える形で相続分譲渡を甥、姪Bから受けて遺産分割調停から排除してもらい、これを調書に明記してもらうという方針を立てました。

理由は以下の2点です。

①相手方(姪A)が甥、姪Bの相続放棄申述取消しの効力自体を争うとなると、前哨戦は地方裁判所で訴訟の形で行われることになり、遺産分割調停が止まってしまう可能性があります。このパターンになると長期化することが予想されるため、このような展開になるかどうかの見通しを早く立てたかったこと。

②また相続分譲渡について調停申立て前に行った上で姪Aのみを相手方として調停を申し立てた場合、調停前に行われた相続分譲渡の効力について相手方が争う可能性があると考えました。そこで甥、姪Bが相続分譲渡によって手続きから排除されるプロセスを手続き上明確にしようと考えたこと。

特に、利益相反の問題を回避するため、相続放棄申述の取消し手続きでは司法書士と連携するなど、細心の注意を払いながら手続きを進めました。その結果、ご相談者様の状況は劇的に改善しました。

交渉項目【Before】ご依頼前の状況【After】弁護士によるサポート後の結果
ご相談者様の相続分他の相続人の相続放棄により、2分の1に減少相続放棄の取消しと相続分譲渡により、6分の5に増加
予想される取得額遺産総額8,300万円の半額である、約4,150万円遺産の大部分を取得し、代償金支払後も約6,900万円を確保
経済的利益-弁護士の介入前と比較し、約2,750万円の増額に成功

 

当初は相手方(姪A)にも代理人弁護士が就きましたが、当方が構築した法的な枠組みに特段の反論はなく、最終的には、ご相談者様が不動産を含むほぼ全ての遺産を取得し、相手方には相続分に応じた代償金を支払うという、ご相談者様の希望通りの内容で調停が成立しました。

4.本件解決のポイントと弁護士からのコメント

相続放棄申述の取り消しについて甥、姪Bの協力が得られたこと、取り消しについてスムーズに申立てが受理されたことが解決にとって重要なポイントとなりました。

相続放棄の申述を取り消した事例については私自身が実務上扱ったことがないものでしたし、遺産分割についての実務書でもさらっとしか触れられていない部分でしたので、勇気を持って相続放棄の申述取り消しという方針を立てたことが最重要ポイントであったと考えます。

「相続放棄」と「相続分の譲渡」は、似ているようで法律上の効果が全く異なります。この違いを正確に理解していないと、今回のように、善意の行動が予期せぬ不利益に繋がってしまうことが少なくありません。遺産分割にあたっては正確な知識、相続プロパーの知識だけではなく遺産を構成する不動産や預金についての専門的知識がないと適切な問題解決ができないのではないかと考えます。

遺産分割を始めとする相続に関する悩みを抱えておられる方は、まずは弁護士に相談していただくことをお勧めしますし、遺産分割、相続開始前の遺産からの預金流出に伴う紛争など相続に関連する紛争について十分な知識と経験を有する弁護士に相談されるのが良いと思います。

この解決事例を読んでいただいた方が当事務所所属の弁護士に相談するという適切な選択をとられることを願っております。

監修者

弁護士法人みなみ総合法律事務所濵田諭
法人顧問、企業相談、労使紛争など使用者側の弁護士業を専門とする。
弁護士歴17年以上で解決実績多数。宮崎県内で濵田個人の顧問先企業80社以上。
主に宮崎市エリアを担当。


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