【宮崎の弁護士が解説】離婚時の財産分与、どう進める?4つのステップで徹底解説

当事務所は、離婚問題を重点的取扱分野の一つとしております。
離婚を決意された方、あるいは検討中の方が、必ず直面するのが「財産分与」の問題です。「夫婦の財産は、どうやって分けるの?」「家や車はどうなるの?」といった疑問にお答えするため、今回は、財産分与の基本的な進め方を4つのステップで分かりやすく整理します。


本記事は、東京家庭裁判所が公表している審理モデル(東京家庭裁判所家事第6部『「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」について』)等も参考にしています。

 

そもそも、財産分与とは?

離婚をすると、夫婦としての権利や義務はなくなりますが、婚姻期間中に「夫婦が協力して得た財産」(民法768条3項)を清算し、それぞれの貢献度に応じて公平に分配する権利が生まれます。これが財産分与請求権です(同条1項)。

財産分与には、主に以下の3つの意味合いが含まれますが、中心となるのは①の清算的要素です。
① 清算的財産分与:夫婦の共有財産を公平に清算する(これが中心です)
② 扶養的財産分与:離婚後の生活が困窮する側を扶養する
③ 慰謝料的財産分与:離婚の原因を作った側が支払う慰謝料

財産分与を求めるには?

まずは夫婦間の話し合い(協議)で決めるのが原則です。
話し合いで合意した場合は、後のトラブルを防ぐため、「離婚協議書」を作成することをお勧めします。ご自身で作成したものも有効ですが、重要な取り決めですので、弁護士に作成を依頼したり、さらに強制力のある「公正証書」として残したりすると、より安心です。

もし協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。
ただし、注意点として、離婚から2年が経過すると、財産分与を請求できなくなります(民法768条2項。一般的には除斥期間と解されています。)。この除斥期間は、後から延長することができないため、お早めに手続きを進めることが重要です。

 家庭裁判所に提出する家事調停申立書の書式や提出先等は宮崎家庭裁判所のホームページをご参照ください。

財産分与の4ステップ

ステップ1:何を分ける?~分与対象財産の確定~

まず、夫婦のどちらの名義であるかにかかわらず、婚姻期間中に協力して築いた全ての財産をリストアップした「財産一覧表」を作成します。

その際、いつの時点の財産を対象とするかという「基準時」を決める必要があります。これは、夫婦の経済的な協力関係が終わった時点、つまり原則として「別居を開始した日」となります。もっとも、単身赴任や週末婚が先行して別居に至る場合など、必ずしもどの時点が別居開始日であるか明確ではないケースもあります。そのような事案では、上記の観点から、夫婦共有財産の形成・維持に向けた経済的協力関係の終了時点に関する個別具体的な主張立証が必要となります。

財産一覧表の書式及び注意事項は、東京家庭裁判所のホームページにも掲載されていますのでご参照ください。

【分与の対象となる財産の例と、その証明方法】

財産立証方法備考
預貯金

・通帳

・取引履歴

・残高証明書

生命保険

・保険証券

・解約返戻金見込額証明書

掛捨て型でない保険が対象です。
退職金・退職金見込額証明書別居時に自己都合退職した場合の退職金相当額から婚姻前労働分を控除した形で計算します。
株式

・評価額の証明書

非上場株式は、決算書を基に専門的な株価算定が必要です。

不動産

・不動産登記簿謄本(法務局で取得)

・不動産業者の査定書

・(売却済みの場合)売買契約書等

・不動産価額は不動産鑑定士による鑑定が正確ですが、鑑定には費用がかかることから、実務的には不動産業者の査定書で評価額を算定します。

・夫婦双方が準備した査定書の金額が異なる場合でも、金額にそれほど差がなく、査定価格に不合理な事情がなければ、両査定書の平均値とすることもあります。

・売却済みの不動産は、売却価格から手数料等(仲介手数料、抵当権抹消登記費用、印紙代等)を控除した残額で評価します。

住宅ローン

・住宅ローン残高証明書

・返済予定表

住宅ローン付不動産は、不動産は最新の時価額で評価し、住宅ローンは別居時の債務残高で評価し、これを不動産時価額から控除することで計算します。

 

ステップ2:いくらになる?~財産の評価~

次に、ステップ1でリストアップした各財産の価額を評価します。預貯金のように金額が明確なもの以外は、その価値を算定する必要があります。

特に、不動産や株式のように価値が変動する財産は、別居時の価額ではなく、離婚時(裁判であれば口頭弁論終結時)に最も近い時点の価額で評価するのが原則です。

ステップ3:分け方は?~原則「2分の1ルール」と寄与度~

財産の総額が確定したら、次はその分け方を決めます。
専業主婦(主夫)であったとしても、家事や育児といった貢献によって、夫婦の財産形成に寄与したと考えられます。そのため、財産形成への貢献度(寄与度)は、原則として夫婦それぞれ2分の1とされます。これが、実務で広く採用されている「2分の1ルール」です。一方の特別な才能や努力によって高額な資産が築かれたなど、極めて例外的な事情がない限り、この割合が修正されることは稀です。

寄与度について補足します。財産形成に関する寄与といっても、財産形成の経済的寄与(金銭、現物、労務等の提供)に限られず、夫婦としての協力・役割分担関係に対する評価が問題となります。この夫婦の多様な協力や異なる役割の評価自体は困難な問題であり、寄与度を2分の1から修正する事案は極めて稀なのが現状です。

最近の東京家裁の実務では、基本的には、特段の事情がない限り2分の1を原則としつつ、特段の事情を主張する当事者に2分の1を修正すべき必要性・相当性を具体的に主張立証させる運用が報告されているところです(東京家庭裁判所家事第6部「「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」について」18頁目、東京家庭裁判所家事第6部編著「東京家裁人訴部における離婚訴訟の審理モデル」について『東京家庭裁判所に置ける人事訴訟の審理の実情(第2版)』30頁目)。

ステップ4:具体的に計算してみましょう~財産分与の計算例~

以上のステップを踏まえ、具体的に計算してみましょう。寄与度を原則どおり2分の1としています。

計算式={請求者の純資産額(請求者名義の資産合計-請求者名義の負債合計)+相手方の純資産額(相手方名義の資産合計-相手方名義の負債合計)}÷2-請求者の純資産額

【例】

  • 夫の資産:2500万円、夫の負債(住宅ローン):▲1000万円 → 夫の純資産:1500万円

  • 妻の資産:500万円、妻の負債:0円 → 妻の純資産:500万円

  1. 夫婦の純資産合計を計算します。 1500万円(夫)+ 500万円(妻)= 2000万円

  2. 各自の取り分を計算します。 2000万円 ÷ 2 = 1000万円

  3. 分与額を計算します。 妻は1000万円の取り分があるところ、既に500万円の純資産を保有しています。 よって、不足分の500万円(1000万円 - 500万円)を、夫に対して請求することができます。

【注意点】

「自宅だけ欲しい」「この預金口座だけ分けてほしい」といった、特定の財産のみを対象とした分与は、当事者同士の合意(協議や調停)があれば可能ですが、裁判所の審判や判決で実現することは困難です。財産分与は、あくまで夫婦の全財産を一体として清算する制度だからです。

 

おわりに

今回は財産分与の基本的な進め方を概説しました。 しかし、法律論には必ず例外があり、個別の事情によって結論は大きく変わり得ます。弁護士にご相談いただくことで、ご自身の状況に合わせた、より有利な解決案が見つかる可能性があります。

特に、当事務所は宮崎県内全域の離婚事件に豊富な経験を持つ、地域密着型の法律事務所です。県内3支店(宮崎・都城・延岡)にて、宮崎の離婚問題や家庭裁判所の運用に精通した弁護士が、直接お話を伺います。

離婚のご相談は初回無料です。皆様が一日でも早く平穏な生活を取り戻せるよう、最適な解決方法を分かりやすくご提案いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

ご相談者様に応じた最適なアドバイスをさせて頂きます。

 

【宮崎事務所】宮崎市老松1-2-2 宮崎県教職員互助会館2階(宮崎駅から徒歩5分、モリタゴルフ宮崎店の隣)

【都城事務所】宮崎県都城市上町13-18 都城STビル6階(西都城駅から徒歩5分、都城合同庁舎近く)

【延岡事務所】宮崎県延岡市北町1-3-19 米田ビル2階(延岡市役所~延岡シネマの通り沿い)

※宮崎県のすべての地域に対応致します。県外の方のご相談も承っております。

 

監修者

弁護士法人みなみ総合法律事務所柏田笙磨
顧問先企業の企業紛争、民事紛争、家事紛争全般の取扱いを専門とする。
相談実績は年間100件以上。法的手続を得意とし、専門訴訟を含め、勝訴判決多数。
主に延岡事務所を担当。

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